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はじめに  
 

 龍谷大学で刑事法(特に刑事政策)を教えている石塚伸一先生からの便りです。石塚先生は今年の 9月までドイツにいらっしゃる予定で、ドイツからの便りが不定期できます。今回は、5月にフランクフルトで開催された「ドイツの刑法学会」に出席した時のお話です。
すべての紹介は編集上、省略せざるをえませんが(というか、ややむずかしいので)「シンポジウム/テロに対する戦争:法治国家刑法にとっての帰結」の報告を掲載させていただきます。ここでは、まさに「安全や安心な社会をどのように築くのか」という日本社会にも共通するテーマが議論されています。とくにテロのような行為を「犯罪」として取り締まるためには、どういう理屈が必要なのか、報告では、「敵対刑法」ということばが使われています。これは、政府や警察がよく使う「安全で安心した社会が築くために」ということばで、プライバシーの保護よりも「監視カメラの設置」を優先することや、「イラクのフセイン政権がテロ国家だから、正義の戦争を行う」というブッシュ政権の理屈を刑法で正当化することにもつながる内容です。
一方、現実をみた場合、世界中でこのことが問題になっています。一般の人と「敵となる人」を分けて「敵となる人」は厳しく罰するという考え方をどうみるかは、人権尊重と平和の実現とを考える上で避けて通れないテーマです。

(Hurp事務局)

ドイツ刑法学会から
2005年6月6日
石塚 記
  【ミニシンポジウム】「テロに対する戦争:法治国家刑法にとっての帰結」
(Krieg gegen den Terror" - Konsequenzen für ein rechtsstaatliches Strafrecht)」
〔報告〕:カイ・ネーム(連邦検察庁検事)、ギュンター・ヤーコブス(ボン大学)、ペーター=アレクシス・アルプレヒト(フランクフルト大学)

まず、「現下の治安情勢とテロ対策について」の官僚的(いかにも権力者側)なネーム報告。
(ヤーコブス氏の報告)

1930年代にはじまり近年の警察法・捜査手段の強化、9.11以降のアメリカを中心とするテロ対策強化、そしてEUの刑事政策の協調などを整理した後、法治国家における法益保護機能と規範妥当機能の峻別、とりわけ刑法による規範妥当の確保を強調する立場から、一般刑法の妥当を確保するためには、特殊な犯罪に対する「敵対刑法」による補完が必要であるとする。
一方、法の認知と法的安定性を重視する立場(アルプレヒト氏)からは、「法文化に敵対する者に対しては厳しい刑罰、ときには保安監置による抑圧も認める。しかし、人間の尊厳と人権の普遍性から刑法の目的のひとつは、公平性と平等性の確保にあり、敵対刑法は誰を敵と見るかによって恣意的な法適用をもたらす。イギリスやアメリカのテロ対策法は、人権を否定するような法の存在を認めるものであるとして、敵対刑法という観念を批判する。政治の専横に抵抗するのが「学」任務だとすれば、敵対刑法はこれを法放棄するものではないか。」と述べている。
法治国家に例外を認めることが果たして形式的意味での法治国家の維持には役立つとしても、人権の保障を志向する実質的法治国家の理念にかなったもの足りうるのか。
(1)「危険」とレッテルを貼られた人たちを周縁へ追いやるような犯罪闘争は正当化されるのか、(2)法治国家とは何か、(3)敵対刑法という概念は法治国家と両立するのか、(4)南米で敵対刑法という概念を濫用して独裁政権に逆らう者が処罰されているなど様々な疑問が提起されたが、ヤコブス氏の考えに対して、代替案は示されなかった。
敵対刑法が一般刑法の補完機能をもつのだとすれば、問われるのは敵対刑法によって維持されるはずの刑法の中核とは何か、そのことにより、何が実現するのかである。
 
 

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