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サンマリノ共和国

サンマリノ大使館 訪問レポート


 軍隊を持たないということはどういうことなのでしょうか。サンマリノ共和国特命全権大使のマンリオ・カデロ閣下に自国に軍隊のないことについてお話を聞いてきました。
サンマリノ共和国は周囲をイタリアに囲まれた人口約3万6千人(千代田区の人口は約4万4千人)、面積約64平方km(世田谷区と同じくらい)の世界で5番目に小さな国です。
■軍隊を持たない歴史
――サンマリノが軍隊を持たないことになった、歴史、経緯についてお聞かせください。

大使 サンマリノは、イタリアの歴史と深い関係があります。イタリアはかつて複数の王国が領土を拡大しようとして摩擦や戦争を繰り返していました。これらの王国や地域共同体は「ファミリー」でした。サンマリノにはファミリーはありませんでした。サンマリノは国ができた当初から共和国republicでした。つまり、国民publicが王様だったわけです。デモクラシーdemocracy(民主主義)という言葉はギリシャ語で国民の力という意味です。サンマリノはdemocraticでrepublicなのです。共和国であるサンマリノは、自分の国を守るため以外には戦いませんでした。
■世界最古の共和国として
大使 共和国としてのサンマリノは各国から尊敬されています。アメリカのエイブラハム・リンカーンが大統領として、アメリカをどのような国にするのかといった問題において、サンマリノを手本とし、絶賛しました。
 サンマリノは最古の共和国ですが、君主国や様々な政治形態の国を否定しません。それぞれの国にはそれぞれの歴史があり、多様性を認めることが大切なのです。日本は長く君主国家でありましたが、その歴史もサンマリノは尊敬しています。多様性が認められなかったら、世界はワンパターンになってしまいます。それはつまらないでしょう。こっちに君主国、こっちに王国、こっちに共和国といった具合に多様な国があることも大切なのです。
■戦争の根幹
 しかし、20世紀になってからの戦争はばかばかしいと思います。これだけ科学が進歩して、人類が火星にすらいけるようになろうかというこの現代で、何故戦争をしなければいけないのか。話し合いをすれば解決できるではないですか。
 現在では、1国が国際政治を無視して生きていくことは出来ません。アメリカでさえ、世界と協調しなければ生きていけないのです。だから、孤立化するような強引なことは誰もしたくないのです。世界はみんな繋がっているのです。みんなお互いが必要なのですから、平和で、お互いに協力していけば、戦争はなくなってしまいます。
 世界で一番使われているお金は、軍事費です。信じられない。そのお金を違う目的に使えば、教育を受けられない子どももいない、病気の人も医者に診てもらえる、そんなパラダイスな世の中になるでしょう。世界では様々な問題が未だに山積しています。食べ物が足りない、お水が足りない、色々なものが足りない。何故かと言えば、戦争のための武器を買わなければいけないからです。
 数年前、私はシンガポールで開かれた武器の展示会に行く機会がありました。そこで最も多くの武器を展示していたのが、アメリカ、中国、ロシアです。残念ながら、イタリアや日本も出展していますが。地雷もまだ売っているのです。しかも、それらの武器には殺傷能力が書いてあります。「この武器を使えば一瞬で何人の人を殺傷できます」とか「これとこれが爆発すれば半径何キロが焦土と化します」といった説明です。おかしいでしょう。今現在の話ですよ。
■紛争の解決手段
――現在、他国との間で紛争状態になったとき、サンマリノではどのように解決を図ることになっていますか。

大使 まず、サンマリノを攻撃する国はないと思いますが、サンマリノはイタリアと自国を守るための条約を結んでいて、もしイタリアが他国を攻撃したときは、サンマリノは絶対に参加しません。逆に、他国がイタリアを攻撃してきたときには、自国を守るために義勇兵を出して協力します。第二次世界大戦ではイタリアを守るために義勇兵を出して、死者も出ています。

――アタックではなく、ディフェンスオンリーなのですね。

大使 そのとおりです。
■サンマリノの政治体制
大使 アメリカも共和国です。アメリカのシステムはサンマリノのシステムに似ています。ただ、サンマリノには大統領が2人います。この2人は半年ごとに交代します。仲良くしなければ政治が進まないのです。
 アメリカよりも進んでいるところもあります。サンマリノは大統領選挙にお金がかかりません。大統領は2人制ですから。更にマイノリティの意見も無視しません。半年周期のシステムを政治家及び国民すべてが共有している状態です。
■質疑応答
――マイノリティの意見を聞き入れるということは出来るのですか。

大使 出来ます。今の2人の大統領は上手くいっています。何故かといえば2人のトップがいるからです。仮に1人の大統領が「こうしよう」と思っても、それを強引に進めることが出来ない。もう1人同じ権限を持っている人がいるからです。ちゃんと相手を説得しなければいけない。無視できないのです。

――しかし、世界という規模でバランスを取るのは難しいようにも思えます。

大使 アメリカが「テロリストとは話をしない」という立場をとっています。これは良くない。聞くだけは聞くべきです。完全に無視することで、相手は更に硬化します。しかも、よっぽどおかしな国、人でなければ、話し合いはできるのです。
 喧嘩をするとき、どちらかが100%正しく、その結果として100%勝つという結果にはなりません。どちらも問題はあるし、「100%正しいと思うけど、10%は頭を下げましょう」という妥協が必要なのです。どちらも「1%でも頭を下げたくない」となれば、これはもう紛争になります。

――そしてそのバックにあるのが軍事力なのでしょうか。

大使 そうです。ただ、アメリカが「世界のポリスとして行動する」という考え方はあまり良くない。国連で解決すべき問題です。どうしていけないかといえば、アメリカはパーフェクトではないからです。アメリカほど多くの問題を抱えている国はないでしょう。

――イタリアとの関係はどのようにとらえていますか。

大使 イタリアは様々な歴史的経緯もあり、1700年前から共和国であるサンマリノを、尊敬しています。また、お互いがお互いを尊重し合い、必要としています。

――かつてのローマとイタリアとは違いますか。

大使 まったく違います。ローマはローマの文化を他の地域に広げ、それを標準とさせました。ローマはとても進んでいたのです、だから必要としていたところはあったかと思いますが、多くの国の文化を潰すことにはなったと思います。
 いまはヨーロッパがEUで手を結んでいます。文化を尊重しあっているから上手く行っているのです。経済的に強力ですから。

――カデロさんはサンマリノのどの地域で生まれ、育たれたのですか。

大使 私はイタリアで生まれました。父がイタリア人で母がサンマリノ人です。ですから私はイタリアとサンマリノの二重国籍です。サンマリノ人でイタリア生まれの人は多いんです。二重国籍を認めないのは、アメリカ、日本、中国です。1人の人が両方の国籍を持っていることは不思議ではありません。人間が一つの考え方に凝り固まる必要はないと思います。自由なのが一番です。
 私が日本で一番気になるのは、自殺が多いということです。マニュアル主義が問題の根底にあるのだと思います。私は自殺を減らすという運動に参加しています。人間はロボットじゃありません。フィーリングがある。だから、マニュアルに縛られずに行動することが大切なのです。1年間で3万6千人です。これはサンマリノの人口と等しいのです。恐ろしいことです。

――サンマリノには警察はいるのですか。

大使 います。国全体で180人ですが。サンマリノの刑務所には7部屋しかありません。いつもガラガラです。
 最後にカデロさんは「戦争も武器も暴力も大嫌いです。戦争は人間の欲張りの元です」と締めくくりました。争いの中にあって、戦うことの愚かさを見てきたサンマリノの歴史を垣間見た気がしました。
(文責:HuRP 2008.6.11)
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