普遍性に惹かれた風
A・T
 

 これから日本では、国民一人ひとりが主体となって、国の方針を決めることにします。国の実際の運営は、私たち自身がきちんとした手続で代表者を選び、その代表者に託しますが、代表者たちは、その権力は私たち一人ひとりから託されたものであることをしっかり心に刻み、思い上がることなく、私たちの幸福のために政治を行い、それに反する決めごとは一切してはならないのです。

 これは、先の酷い戦争から学んだことです。戦争中はもちろん、戦争に至る準備期間も、国内・国外にかかわらず大きな犠牲と負担を強いられたのは民衆の一人ひとりでした。だから、私たちは、そんな悲劇を繰り返すような社会の体制を二度と作りません。この考え方は、人間がこれまで何度も失敗を繰り返してきたなかで培ってきた知恵でもあるのですから、自信をもって宣言します。

 私たちが国の方針を考えるとき、いつも思い描くのは、このような未来です。それは、世界中のどこの国に属する人びとも、平和のなかで、自由に、差別されることなく、孤立することもなく、人間としてお互いに尊敬しあいながら生きることができる世界!

 その未来を実現するためには、世界中の、私たちと同じ民衆を信頼して、国と国の間で問題が起きても、平和的な手段で解決することを徹底しなければなりません。私たちは率先してそのように行動します。「自国を守り、他国と対等につきあう」ことを望むすべての国は、他国とそこに住む人びとを思いやることができなければなりません。同じことが、かつては戦争の理由となったことを忘れてはならないのです。

 私たち日本国民は、全力をあげて、私たちの思い描く未来を実現することを誓います。

 
憲法が基盤とする価値観が、現在に至る人間の知恵の総結集で、さらに世界中の人びとに共通だという、普遍性に惹かれるので、縦(歴史)と横(協力・信頼)を際だたせました。